『システム・シンキング入門』という本で、「システムの原型」として把握される5つのパターンが紹介されている、。ソフトウェア開発プロジェクトの分析にも、大いに使えそうなので、以下にまとめておく。
■ 応急処置の失敗
・対症療法が予期せぬ悪影響を発生させて、問題が悪化していく因果ループ
・分類:悪化ループ
開発現場で実によく見かけるもの。例えば「時間が無い」という「問題」に対して、「応急処置」として何かのタスクを省略したりすると、大抵このパターンにはまって後で大変な事になる。
あと切羽詰ったプロジェクトで、下手に増員して却って火に油を注ぐのも、ほぼこのパターン(ほんの少し構造が違うが)。
■ 問題の転嫁
・対症療法による目先の効果により、本来必要な根本的対応が先送りされてしまう因果ループ
・分類:悪化ループ
これもよくある。例えば、「根本的な解決策」がアーキテクチャの変更を伴うような場合に、重い作業を避けてベタな暫定対応に逃げたりすることが良くあるが、やればやるほどコードのメンテ性が低下して、抜本対応が遠のいていったりする。
■ エスカレーション
・双方の行為が脅威となって、互いに行動をエスカレートしていく因果ループ
・分類:悪化ループ
システム開発プロジェクトでは、意外と見ないかも。ちょっと思いつかない。現実の社会では、軍拡競争など、分かりやすいサンプルが豊富。
■ 成功の限界
・拡張プロセスがバランスプロセスに変化して、勢いを失い進歩が止まる因果ループ
・分類:停滞ループ
リファクタリングが実践されていないチームでは、機能追加/変更によるアプリケーションの成長の陰で、重複コードの増殖やメソッドの長大化により変更コストが増加して、結局アプリケーションの成長も鈍っていく事になる。開発者なら分かりやすいパターンだと思う。
あと、組織やユーザが大きくなればなるほど、それ自身の重さが進化を鈍らせるという点では、昨今、Java がパターンにはまっているような気がしないでもない。
■ 成功が成功を生む
・両立すべき事柄の一方での成功が、他方に一層の失敗をもたらす事になる因果ループ
・分類:悪影響ループ
Java と .NET の間で、このパターンが生じる事がある。Java にも .NET にも、それぞれ長所短所があるので、合理的に使い分けられるのが理想だけど、ある局面での Java の選択は、Java 技術のスキル向上を促す一方で、.NET 技術の スキル低下を引き起こす事にもなり、次の局面での Java の選択圧力を強める。これがループして、Java/.NET 間の格差が一定限度を超えると、.NET を使えば低コストに開発できるような場面でも、スキル的に Java しか選択できなくなったりもする(逆も成立する)。結構、優秀な技術者でもこうなってる人が意外と多い。
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アンチ・パターン/プラクティスのうち、プロジェクト管理や開発プロセスの領域に該当するものは、Systems Thinking の方法を使うと統一的に現象を記述できるような予感。因果ループ図を取り入れて、アンチ・パターンのカタログを再編集してみるのも良いかも。
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